"2021年に改正されたベトナムの労働法典は、労働契約、労働時間、解雇手続きなどに重要な変更をもたらした。本記事では、ベトナムで事業を行う企業が知っておくべき雇用実務の主要ポイントを、採用、労働契約、賃金、解雇の4つの観点から解説する。"
2026年版:ベトナム雇用ガイドブック
ベトナムでビジネスを展開する上で、現地の労働法を遵守することは企業経営の根幹をなす重要な要素です。2021年1月1日に施行された改正労働法典は、労働者の権利保護を強化し、使用者側の義務をより明確にしました。本稿では、日系企業がベトナムで従業員を雇用する際に押さえておくべき実務上のポイントを解説します。
1. 採用と労働契約
労働契約の種類:
改正労働法では、労働契約は以下の2種類に簡素化されました。
- 無期労働契約: 期間の定めのない契約。
- 有期労働契約: 期間が36ヶ月以下の契約。契約期間満了後、更新は1回のみ可能。2回目の契約満了後は、無期労働契約に移行します。
試用期間:
試用期間中の賃金は、本採用時賃金の少なくとも85%を支払う必要があります。試用期間は、職務内容に応じて最大180日(高度な専門技術を要する場合)まで設定可能です。
2. 労働時間と残業
- 通常労働時間: 1日8時間、週48時間を超えてはなりません。
- 残業時間: 従業員の同意が必要です。残業時間の上限は、1ヶ月あたり40時間、1年あたり200時間と定められています。ただし、繊維・縫製、電気・電子などの特定業種では、政府の許可を得て年間300時間まで延長が可能です。
- 残業代: 通常賃金に対し、平日夜間は150%、週末は200%、祝日は300%の割増賃金を支払う義務があります。
3. 賃金と社会保険
- 最低賃金: ベトナムの最低賃金は、地域別に4つのレベルに分かれています。ハノイやホーチミン市などの都市部は最も高い「地域I」に分類されます。企業は、この最低賃金以上の給与を支払わなければなりません。
- 社会保険・健康保険・失業保険: 企業と従業員の双方が、法律で定められた料率に基づき、各種保険料を負担します。企業側の負担率は給与総額の約21.5%に上ります。
4. 労働契約の終了(解雇)
企業側から一方的に労働契約を終了させる(解雇する)には、法律で定められた正当な理由が必要です。主な理由としては、以下が挙げられます。
- 従業員が継続的に職務を遂行しない場合。
- 従業員が懲戒解雇に相当する重大な規律違反を犯した場合。
- 経済的理由や組織再編による人員削減(整理解雇)。
整理解雇を行う場合は、労働組合と協議し、労働利用計画を作成した上で、少なくとも30日前に管轄の労働局に通知する必要があります。不当解雇と判断された場合、企業は従業員を復職させ、解雇期間中の賃金や賠償金を支払う義務を負うため、手続きは慎重に進めなければなりません。
ベトナムの労働法は複雑であり、頻繁に改正が行われます。現地での円滑な事業運営のためには、常に最新の情報を入手し、専門家のアドバイスを求めることが不可欠です。



